向日葵の天秤が傾く時
新人の驛を名指しで訪ねるクライアントやお客はまだいない。

上司である挧框節(ウキョウ タカシ)と顔を見合せ、不思議に思いながらも阜紆奢に歩み寄る。



「砧怙驛は僕ですが、昨日の件とは何でしょうか?」


「覚えていらっしゃらないとは………。まあ、いいでしょう。自覚が無いのならば、こちらとしても弁護士の腕の見せどころですから。」



「あの……一体何の話ですか?」



阜紆奢の言っている意味が驛には全く分からない。



「砧怙驛さん、貴方を傷害罪で訴えるという依頼人がおりまして、私はその代理人です。」


「………………はい?」



にこやかに、しかし有無を言わさない雰囲気はやり手の弁護士故なのか?


それとも………?



「訴えるとは穏やかではありませんね。」



ゆったりとした口調でおもむろに立ち上がったのは、所長の劬耡夘薔次(クジョウ ショウジ)。


巫莵と巫莵の上司である稷詫樺堀(キビタ カホリ)とスケジュールの確認後、暫しの雑談中だった。



「砧怙も覚えが無いようですし、私もそのような報告は受けておりません。一度詳しい経緯をお聞かせ願えますか?」


「ええ、もちろん。」
< 3 / 33 >

この作品をシェア

pagetop