ボルタージュ王国の恋物語〜番外編〜
グラハの間では、食事が終わり。レオンはエルティーナをお茶に誘う。
エルティーナが大好きな庭園。可愛らしい動物の置物がふんだんに置かれた庭園は、まるで森の中のようだった。そこにキラキラ兄妹のレオンとエルティーナが入ると、さらに眩しくなる。
蔦が張り巡らされた天然の屋根は、陽の光を全て遮るのではなく、優しい光に変え二人をつつむ。
「そろそろエルに護衛騎士をつけようと思う。一応俺が、思う騎士はいるんだが、エルの意見も聞きたくてな。希望はあるか?
例えば、性格や、見た目、年齢、出来る限りは希望に沿うようにする」
「とくに希望はございませんわ。お兄様が思っていらっしゃる方で大丈夫です」
「そうか……ではまた、近々紹介しよう」
「はい!! 楽しみにしておりますわ」
真面目な話はここまでで、後は面白可笑しく近況報告をしあい、レオンとエルティーナは別れた。
その夜、レオンはアレンに護衛騎士の件を話すため、呼び出した。
「夜遅くに悪いな」
「いや、大丈夫だ。朝、演習場に行った後はずっと部屋に居たからな、こうして夜に庭園にいるのもいいものだな」
「……アレン。頼みたい事がある。強制ではないから、嫌なら断ってくれて構わない。
……俺には、妹がいて。年齢は11。1年後、12歳になる日から、アレンに護衛騎士になってもらいたい」
レオンの言葉は確信していたし、エルティーナに近づく為だけに騎士になり、レオンに近づいたから、想像通りだが幸せすぎて胸の鼓動が苦しかった。
恋い焦がれたエルティーナと会える権利……アレンにとっては何よりも嬉しい報告。
病に苦しみ生きてきて……今はガタのきている心臓さえも愛しく感じた。
「了解した」
「……はっ?……
嫌々、質問はなしか? 給料体制、期間、顔も名前も聞かないで、了解するのか?? おかしいぞ!?」
「申し訳ないが、私はレオンが王太子だと知っている。レオンの妹君、王女エルティーナ様の護衛騎士なら、騎士としてこの上ない栄誉だろう。断る理由はない」
「な、なんだとぉ!?!? 知っていたって!? いつからだ!?
それよりも、俺が騎士見習いとして入団しているのは秘密事項だぞ。お前はどこから、聞いた!! エルの護衛騎士の件も返答次第では無しだ。
信用できない奴に、エルを任せておけない!!」
「私の名前は、アレン・メルタージュ。父はボルタージュ国の宰相だ。知っていて当然だ。
レオンは知らなくとも、国王夫妻は私が騎士見習いとして、レオンに会っているのもご存知だ」
絶句しているレオンに、優しく微笑みながら右手を差し出す。
「護衛騎士として、エルティーナ様を全身全霊で護ると誓う。よろしく、レオン」
釈然としないままレオンは、出されている右手に己の右手を重ねる。
「………色々言いたいが。
お前は騎士としての実力、頭脳、身分、容姿、全てが最上級だ。……憎たらしいくらい。
エルの護衛騎士として、文句は無い。これからもよろしく、アレン」
闇夜を明るく照らす、二人の青年。
ボルタージュ国の伝説になる二人は、こうして出会い歴史を作る。