悪魔に恋わずらい
「ごめんね……泣いちゃって」
ようやく気持ちが落ち着いてくると、何とも言えない気まずさと恥ずかしさが押し寄せてくる。
泣き腫らして真っ赤になった目を擦りながら謝ると、なぜか明石くんもショボンと肩を落としていた。
「僕の方こそ、余計な事してごめん……」
「ううん!!そんなことない。借りたハンカチは洗って返すね」
パリッと糊のきいていたハンカチは今や涙でぐしゃぐしゃになっていた。
(明石くんって……優しいんだな……)
泣き出した私を慰めてくれた彼の誠実さは驚くばかりである。
クラスのムードメイカー的存在である明石くんにこんな繊細な一面があったとは……。
「色々とありがとう。私、そろそろ帰らなきゃ」
そう言って破られたラブレターをポケットにしまうと、後ろ髪を引かれる思いで空き教室から出て行く。
いつまでもあそこにいたって仕方ない。泣いても笑っても待ち人は来ないって分かっているのに。