悪魔に恋わずらい
冬が過ぎ、春の訪れも間もなくという頃。
桜が舞う中、卒業式は厳かに執り行われた。
練習の甲斐もあってか卒業式の演奏も大成功を収め、私もホッとひと安心。
堅苦しい卒業式が終わると、校庭は共に切磋琢磨した先輩の晴れの日をお祝いする後輩達で一杯になった。
もちろん、私達の吹奏楽部もその集団の一角をなしている。
「先輩!!卒業おめでとうございます!!」
「お、さんきゅ」
「これ、お花です。後輩一同から」
後輩ひとりひとりが先輩にお祝いの言葉を述べる中、花束を渡す役は私が仰せつかる。
「ありがとな、石崎。これからもフルート頑張れよ!!」
グシグシと力任せに頭を撫でられると、じわっと涙が滲んだ。
たとえ振られたとしても先輩は未だに私にとって憧れの存在なのである。
「あ、あの……第2ボタンもらえませんか?振られた身分で図々しいとは思っているんですけど……」
「振られた?一体何のことだ?」
「……え?」
先輩は花束を抱えたまま不思議そうに首を傾げた。