悪魔に恋わずらい
「君があんなくだらない男に好意を寄せているなんて許せなかったんだ」
当然のことのように言われても、意味が分からなかった。
自身の行為を正当化するには、あまりにも幼稚な理由だった。
悔しくて涙が零れた。
唯一理解できたのは……この人は手紙を破られた私の気持ちなどこれっぽっちも考えていないということだけだ。
「泣かないで、石崎さん。君には僕がいるじゃないか」
あの日と同じ慰めの言葉が、絶望に拍車をかける。
ただ無邪気に親交を深めていた日々にはもう二度と戻れない。
「累くんのこと……友達だって……思ってた……」
彼の手で摘まれた恋の芽。
その花の色を見ることはもう叶わない。
「私……累くんのことを許さない」
理不尽な悪意があるように理不尽な好意もある。
……私はこの時、初めて悟った。
「それで良いよ。憎まれて本望だ」
累くんはそう言って笑った。
私が好きだった目をくしゃっと細めた笑い方ではなく、唇の端を歪めた悪魔のような笑い方だった。