悪魔に恋わずらい
悲しいことに神田さんの予感は的中することとなった。
「あなた?明石くんとどういう関係?」
給湯室で湯呑を片付けていると、良い男に目がないとご評判のお姉様方にうっかり詰め寄られてしまった。
(結局こうなるのよね……)
私にご執心という欠点を除けば、顔良し、頭良し、性格良し、の三拍子揃っているわけで。
昔からこの手の呼び出しに困ることはない。
どうやら皆、私のような小娘が累くんの周りをうろちょろしているのが気に入らないらしい。
「私達、元同級生なんです」
内心面倒に思っていることなどおくびにも出さないように、機械的に淡々と答える。
「嘘つかないでくれる?じゃあ、今朝一緒に出勤してきたのはどういう訳?」
「会社の前でたまたま会っただけですから」
なるべく穏便に済まそうと努力したが、それは結果として無駄に終わった。
「僕の大切な人をあまりいじめないで頂けますか?」
……どこで聞きつけたのか、噂のご本人が登場したからである。
あちゃーと頭を抱えたくなった。
こういう場に累くんが出張ってくると、決まってろくなことにならない。
「僕の大切な人って……」
「言葉通りの意味ですよ」
累くんが無言の圧力をかけて凄むと、お姉様方はすごすごと引き下がっていった。