悪魔に恋わずらい

「石崎さんに怒られるの久し振りだな~」

「もう!!笑い事じゃないんだからね!!」

「わかった、わかった。彼女達には誰にも言わないように口止めしておくよ。その代り……ご褒美ちょうだい」

「ご褒美?」

“ご褒美”という単語にここまで不穏な気配を漂わせることが出来るのは累くんだけだ。

どんな大層なご褒美を用意しなければならないのかと身構えたが、彼の要求は本当に些細なものだった。

「僕と一緒に食事に行ってくれる?」

「それだけ?」

「うん」

一緒に食事に行くことが果たしてご褒美になるのか不明だが、本人が望んでいるのなら口を挟むことでもない。

(食事くらいなら、まあいいか……)

「……わかった」

「楽しみにしてる」

累くんはパアッと目を輝かせると軽い足取りで給湯室から出て行った。

もしかして……彼はこういう展開になることを織り込み済みで仲裁に入ったのだろうか。

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