悪魔に恋わずらい

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累くんは約束通りお姉様方に口止めをしてくれたようで、危惧していたように他の女子社員から顰蹙を買うような事態には発展しなかった。

どうやって説得したのかは怖くて聞けない。

彼の言わずと知れた特技その2は脅迫である。

願わくば真っ当な手段でありますように。

なにはともあれ、今度は私が約束を守る番となる。

(変じゃないよね……?)

姿見の前でクルリと一周する。

襟元にビジューをあしらったパステルグリーンのワンピースは、どんなお店に連れていかれても大丈夫なようなよそ行き仕様である。

「やだ!!もうこんな時間!!」

待ち合わせの時間も迫ってきていたので、バッグを持ってエントランスまでやって来ると累くんが既に準備万端で待っていた。

「可愛い」

「あ、ありがとう……」

前髪を直すふりをして照れを隠す。

開口一番褒められて、悪い気はしない。

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