悪魔に恋わずらい

食後のコーヒーをちびちびと飲んでいると、累くんがおもむろにビロードで出来たケースをテーブルに置いた。

「これ、何?」

ケースについて尋ねると累くんはニコニコと満面の笑みで答えた。

「何って……指輪だよ?」

「指輪!?」

「……僕と結婚してくれるよね?」

結婚の二文字を聞いた瞬間、卒倒するかと思った。

「待って。私、頭が追い付いてない……。何をどうやったら結婚って話になるの……?」

「石崎さん、言ってたじゃん。自分の夢のために留学する気概のある人と結婚したいって」

「それはっ……!!」

言ったかも……。結構うろ覚えだけど……。

確か、累くんから借りた小説の登場人物のひとりにそういうタイプの人がいて……話の種にそんなことを言ったような……。

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