悪魔に恋わずらい
警察との現場検証の結果、通帳と印鑑、祖母から譲り受けた真珠のネックレスが盗まれていることが分かった。
犯人が物色中に出くわしていたら命はなかったということを考えると、被害が少なくて良かったと言うべきかもしれない。
事情聴取も終わり警察署を出るころ頃には日付も変わっていた。
「大変だったね」
累くんは事情聴取が終わるまで、警察署の外で待っていてくれた。
茫然自失の私よりもよっぽどしっかりしていて、現場検証では警察官との受け答えを変わってくれる場面もあった。
「付き合ってくれてありがとう。もう大丈夫だから累くんはお家で休んで?」
「石崎さんはどうするの?」
「どこか適当にホテルでも探すわ。さすがにアパートには帰れないし……」
実家に帰るという選択肢は最初からない。ここから電車で3時間以上かかる上に、終電はとっくに終わっている。
深夜に突然泊めてくれと電話して、友人に迷惑をかけるのも憚られた。
「ねえ、石崎さんさえ良ければ。僕の家に来ない?」
「え?」
累くんの住んでいるアパートは私のアパートの近所にあった。
もちろん、私の傍にいるにはその方が都合が良いからである。