悪魔に恋わずらい

私の名前は石崎紅子。24歳の普通のOLだ。

話題に上っている彼の名前は明石累。

業界の中でも老舗であることが取り柄の2流企業に颯爽と現れたアメリカ帰りという経歴を持つエリートサラリーマン。

私と累くんの仲はちょっとやそっとで語りつくせるほど簡単ではない。

「もしかして元カレ?」

神田さんが更に勘ぐりを入れてくるので、牽制するように事実を述べる。

「私と累くんがそういう関係になったことは一度もありません」

そう言ってまだ半分以上中身が残っているお弁当箱の蓋を閉めてしまう。

「食べないの?」

「お腹一杯だから」

累くんのことを考えると、石でも出来たかと錯覚してしまうほど胃が重くなる。

ふうっとため息をついて空を仰ぐ。

彼が今更、私の前に現れた目的は一体何なのだろう。

累くんがいない5年間がいかに平和だったのかとしみじみと思い知る。


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