悪魔に恋わずらい
「前から聞いてみたかったんだけど、実際のところ、あんたあいつのことをどう思ってるの?」
「どうって……」
改めて問われると困ってしまう。
累くんが私のことをどう思っているかではなく、私が累くんのことをそう思っているか。
いくら考えても型通りの答えしか出てこなかった。
「手のかかる弟……?」
「なんじゃそれっ!!」
樹里はずこーっとテーブルに倒れ込んだ。
ご期待に応えたいのは山々だけれど、他に思いつかないんだからしょうがない。
弟なんていないけど、もしいたとしたらこんな感じだろう。
累くんは頭の固い所もあるし、駄々をこねることもしょっちゅうである。
それはまるでおもちゃを取られそうになって泣きじゃくる子供のようで。
聞き分けのない彼を諭したり、妥協したり、時には怒ったりを繰り返している内に、芽生えたのはお世話係としての自覚と義務感だった。
“ここで投げ出したら他人様に迷惑をかけることになる”
彼をこんなふうにしてしまったのは自分のせいであるという負い目もあるのかもしれない。