悪魔に恋わずらい

樹里との食事を終え家路に着くと、累くんは既に帰宅していた。

「おかえり」

「ただいま」

「夕飯あるよ。今日は石崎さんの好きなブリの照り焼き」

フライ返し片手にキッチンに立つ累くんはまるで熟練の主夫のようである。

「ありがと。実は樹里と外で食べてきたの。照り焼きは明日の朝もらうね」

「半沢さんは元気だった?」

「うん。なんか大学入ってから余計にパワフルになったみたい」

そう答えると、食後に口休めのバニラアイスでも頂こうと冷凍庫の扉を開ける。

「あれ?アイスなかったっけ?」

アイスの買い置きがなくなっていることを指摘すると、累くんがさあっと青ざめた。

「ごめんね!!今すぐ買ってくる!!」

「え!?別に食べなくても平気……」

食べるのが習慣になっているだけで、バニラアイス自体に思い入れはない。

「ううん!!直ぐに戻って来るから!!」

言うが早いか累くんは財布を持って出掛けて行ってしまった。

キッチンにポツンとひとり取り残された私は確信した。

(これは……)

早々にチャンス到来?

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