悪魔に恋わずらい
「累くん……?」
名前を呼ぶと累くんが伏せていた顔を上げた。
「どうして僕じゃダメなの?」
頭上からハラハラと落ちてきたのは……涙だった。
「……石崎さんに嫌われたら生きていけない」
泣いてる……。本気で泣いている……。
イケメンの泣き顔なんてそうそう拝めるものではない。
「僕は石崎さんの好きなお笑い芸人だって、苦手な野菜だって知ってる。変な柄のTシャツを着てたって笑わないし、毎日欠かさずバニラアイスを食べるのはどうかと思うけどそれも受け入れる」
「っ~!!やめて~っ!!」
なにこれ!?拷問!?
自分の欠点をいくつも羅列され、恥ずかしさでいやいやと悶える。
「石崎さん……受け入れてよ。君がイエスと言ってくれたら、僕は死んだっていい」
受け入れる?一体どうやって?
床ドンされているこの状況すら、好ましく思っていないのに?
「そんなこと簡単に言わないで!!」
かっとなって累くんを突き飛ばすと、ダメ押しとばかりにリングケースを投げつける。
「帰る!!」