悪魔に恋わずらい
「こんな晴れの日に湿気た面してんじゃねーよ、二人とも」
「高見沢先輩!!」
「久し振りだな、石崎、半沢」
先輩の顔を見た瞬間、ぶわっと様々な初恋の思い出が蘇ってきた。
あの頃、何度その背中を追いかけただろう。
……高見沢先輩は私の初恋の人だ。
「先輩こそ……お久し振りです」
先輩に会うのは卒業式に第二ボタンをもらい損ねた時以来だ。
10年振りに再会した先輩は背も伸びて身体もがっしりしていて、中学生の頃とは比べ物にならないくらい格好良くなっていた。
ただ、私が魅かれた笑顔にはあの頃の面影が色濃く残っていた。
「ったく、あいつらこの俺を差しおいて先に結婚するんだもんな」
軽口を叩けるのは仲が良い証拠である。
新郎は私達と同じ吹奏楽部の1年先輩、つまり高見沢先輩にとっては同期なのである。
「飲み物取ってくるね」
先輩に片想いしていたことを知っている樹里は気を利かせたのか、ドリンクスペースへと消えていった。