悪魔に恋わずらい

(うう……どうしよう……)

先輩が隣にいるというのに、手持無沙汰になってしまった。

このまま樹里が帰って来るのを無言で待っているのも気まずいと思っていると、先輩の方から話を振ってくれる。

「石崎は……仕事してんのか?」

「普通のOLです。先輩は?」

「普通のサラリーマン。安月給なりに一生懸命働いてるよ」

おどけて笑ってみせると、より一層中学時代を思い出す。

音を外しても大丈夫だって励ましてくれた先輩に胸を高鳴らせていたのだ。

「石崎なんかはとっくに結婚して専業主婦でもしてんのかと思ってたけど意外だったな。あいつ?なんだっけ?よく一緒にいた爽やかっぽいイケメンの……ええっと……」

「累くんですか」

「そうそう、明石だ。明石累!!」

学年も違うというのに累くんの名前が先輩の耳にまで入っていたことに驚く。

「すっげえ仲良かったよなあ。てっきりあいつと結婚しているかと思ってたぜ」

「まさか」

茶化すように肩を竦める。

プロポーズはされたけど、実際に結婚するかどうかはまた別問題である。

累くんと結婚なんて、想像しただけで大変そうだけど……。

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