悪魔に恋わずらい
(え、と……。これはひょっとして、ひょっとすると……)
私の気のせいでないなら初恋のやりなおしとも言える、降って湧いたような恋のチャンスなのではないか。
相手がかつて憧れた先輩なら断る理由もない。
ドキドキしながら連絡先を交換したところで、樹里がようやく戻って来た。
「お待たせ。紅子の分ももらってきたよ。さっき飲んでたやつとおんなじので良かった?」
「あ、うん。ありがとう」
グラスを受け取っている間に先輩は別のテーブルに移動してしまった。
女友達ばかりのアドレス帳に累くん以外の男性が増えていて、つい携帯をマジマジと眺めてしまう。
(交換しちゃった……)
悪いことをしているわけでもないのに後ろめたいのは、累くんに慣らされている証か。