悪魔に恋わずらい

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「どこに行くの?」

「る、いくん……」

“映画を見に行かないか?”という先輩のお誘いに対して、私が返したのは“喜んで”の一言だった。

累くんに先輩の存在が感づかれないようにしていたつもりだが、いざ出掛ける段になって見つかったのは不覚としか言いようがない。

「ど、どこだっていいでしょう!?」

「……僕も一緒に行く」

映画を見るというのが口実のデートだということが分からないほど初心ではない。

先輩と出掛けるのに累くんがついて来たら台無しになる。

プロポーズの一件で大人しくなるかと思ったらとんでもない間違いだった。

「つ……ついてこないでっ!!」

今日こそは捕まってなるものかと脱兎のごとく走り出す。

駅まで全速力で走って汗だくになって背後を振り返ってみたがと、追っ手の姿はない。

(もしかして……まけたの……?)

こういう時、どこからともなく現れて邪魔をするはずの累くんが、静かに引き下がったことに一抹の不安を覚えてしまう。


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