悪魔に恋わずらい
悪魔に恋わずらい
……ラブレターを破いたのは累くんじゃなかった。
真実を知ると居ても立っても居られず、先輩を置いてつい走り出してしまった。
10年もの間、真相を隠し続けた彼の真意を今すぐにでも問いたださなければ。
そう思って急いで帰宅すると、私の部屋のドアの前に累くんが腰を下ろして待っていた。
「何してるの?」
「石崎さん……」
中腰になって累くんの顔を覗き込むと、ひどく憔悴しているようで瞳の色が海の底のように暗い。
まさか、私が出掛けてから10時間以上この体勢で待っていたのか。
「今日、あいつと出掛けたんだろう?」
「……うん」
隠すだけ無駄なので正直に答える。
「石崎さんがどうしてもあいつが良いって言うなら僕も手伝う……」
まったく……一体何を手伝うつもりなのか。
私の望むことなら愛のキューピッドですら進んでお手伝いしてくれるとでもいうのか。バカげている。