悪魔に恋わずらい
「ねえ、あの会社で働いているって誰から聞いたの?」
「さあ、誰でしょう?」
累くんは二へっと笑うと、涼しい顔で鼻歌を歌いだした。
問い詰めたところで、情報提供者の名前を出す気はさらさらないのだ。
「石崎さんと帰れるなんて、何だか昔に戻ったみたいだ」
ご機嫌というかご満悦というか……。
一緒に帰るのがそんなに嬉しいのだろうか。
その様子は実家で飼っている犬のジロウを思い起こさせる。
散歩に行くとなると尻尾を振って喜ぶ利口な柴犬である。
(ジロウ、元気かな……会いたいな……)
ジロウに想いを馳せれば、現実逃避が捗る捗る。