悪魔に恋わずらい
「んで?いつ結婚するの?」
「来月の終わりに。入籍だけ先にすませちゃうわ」
「早いねー。くっついたと思ったら即結婚?」
「累くんが待てないっていうから……」
かつての宣言通り何もかも奪われてしまったあの日に証人欄まで記入済みの婚姻届けを見せられた時は、本当にヒヤっとした。
すぐにでもお役所に飛び込んでいきそうな彼を必死の思いで説得して、ようやく他人様に顔向けできる最低限の段取りをつけたのだ。
「そりゃ高見沢先輩も泣くわねー」
話しの途中で帰ってしまったことに関しては、後から電話で平謝りした。それと同時に、交際の件も丁重にお断りした。
“やっぱりな”と力なく答える先輩に、あの日ラブレターに書いたありのままの事実を伝えると更にがっくりさせてしまった。
もし、ラブレターが先輩の手元に渡っていたら私の人生も変わったものになっていただろう。
……いや、それはないな。
そんな人生をあの累くんが許すはずない。
「なにはともあれお幸せに。式には呼んでね」
樹里はなんだかんだ言いつつ最後には私と累くんの門出を祝福してくれた。