強引上司にさらわれました
◇◇◇
「ねぇ、朝倉課長となにかあった?」
そんな質問を美優にぶつけられたのは、不可解な心の動きを察知した夜から三日ほど経った頃だった。
広い社員食堂の窓際のテーブル。
そこは、地上十五階という高さのおかげで見晴らしがよく、お昼休みには争奪戦になる場所だ。
その景色を見ながらエビチリを頬張ろうと、今まさに口を大きく開いたときだった。
その状態のまま数秒フリーズする。
「出勤してくるときに、朝倉課長と泉が一緒だって目撃情報があちこちから上がっててね」
ギクリせずにはいられなかった。
エビチリを皿に戻し、ひとまず水を口に含む。
これでは、美優の言葉が本当だと言っているようなものだ。
あの夜から課長ときたら、部屋を出ると私の手を取り、悠々と管理人さんの前を挨拶して通る。
しかもなぜか、手をつないだまま駅までだ。
さすがに会社の最寄駅に着いたときには、いつどこで社内の人に見られるかわからないから手を離すけれど。
そこまでの間に、誰かに目撃されてしまったのか。
「ほら、朝倉課長ってファンが多いでしょ。だから、同じ部署の泉に対するやっかみみたいのもあるんだろうけどね」