強引上司にさらわれました
「単なる言い訳にしか聞こえない」
どうやら美優は、課長が私のことを好きだと思いたいらしい。
私からしてみたら、そんなことは絶対にありえない。
ただでさえ私は、結婚式で新郎に逃げられるような女なのだ。
課長の恋人として隣に立つには、もっと凛と美しくて、しっかりした女性じゃないと絵にならない。
私をマンションに置いてくれたのは、仕事のことを本当に心配したからに過ぎないだろう。
「それにしても達也くん、出勤してこないね」
「うん……」
「舞香ちゃんもだし。ふたりとも退職するつもりなのかな」
あれから一切連絡を取っていない私たち。
本当はいろいろと話さなきゃならないことがあるんだろうけど、なにを話し合えばいいのか私にはわからない。
昨夜お母さんから連絡が来て、麻宮家で招待した親族への謝罪はお父さんが済ませてくれたらしい。
元木家のほうは私じゃどうにもならないから、達也がやるしかない。
あとは、結婚式の費用と新婚旅行のキャンセル料の話だ。
これだけは私がきっちりとしなくては。
会いたくないからと、いつまでも逃げているわけにもいかない。
そのことを考えると、ズーンと気分が沈むのだった。