強引上司にさらわれました
ふつふつと怒りが沸いてくる。
けれど、ここで達也にぶつけたところで、事態が好転するわけじゃない。
なんとか押しとどめた。
「会社、辞めるの?」
私の質問に達也は首を横に振った。
「恥ずかしいのは覚悟の上。辞めるわけにはいかないから」
「……彼女は?」
「舞香は……」
呼び捨てとは、すっかり親密そうだ。
「俺はともかく舞香はいられないだろうから、辞めることになると思う」
なるほど。
だから余計に達也は辞められないのだ。
「ねぇ、達也、最初からきちんと聞かせて。どうして私たちはこうなったの?」
ひとりで悩んでいたって、答えは出ない。
今さらどうにもならないことだと分かってはいるけれど、結果だけじゃ次に進めない。
自分の中で決着をつけたいから。
「あれは去年の十二月だったと思う」