強引上司にさらわれました
達也はポツリポツリと話し始めた。
部署の忘年会で酔った舞香ちゃんを達也が送って行くことになったそうだ。
そのタクシーの中で想いを告げられたらしい。
ただし、その夜は送りオオカミになることもなく、紳士に送り届けただけだったと。
ところが、愛されキャラの彼女のこと。
告白されてから気になって仕方がなくなったと。
彼女が笑えば嬉しくて、その笑顔を見るために話題を見つけては話しかけた。
それからしばらくして訪れたクリスマスに、達也からアプローチをしたそうだ。
私という婚約者がいながら――。
おばさんが倒れたからクリスマスは一緒に過ごせないというのは、完全なる嘘だったのだ。
達也の言葉を信じて、私はひとりきりのクリスマスを過ごした。
まったく疑うこともなく。
ただ、その時点でもまだ、達也は迷っていたらしい。
結婚の準備は着実に進んでいき、私との未来が近づいていく。
気持ちは舞香ちゃんに完全に傾いているのに、時間に流されるまま式当日を迎えてしまった。
達也はそこまでゆっくり言葉を選ぶようにして私に話して聞かせた。
「俺さ、好きな人と一緒にいるのが、こんなにもドキドキすることだって知らなかったんだ」
「え……」