強引上司にさらわれました
◇◇◇
どこか気が抜けたような状態で人材開発課へ戻ると、ちょうど顔を上げた課長と目が合った。
「なにかあったのか?」
私の顔を見るなり、課長が声を掛ける。
課長が見てもわかるくらい、ひどい顔をしているみたいだ。
「……あの、課長、早退させていただきたいのですが」
さすがに達也と話したことのダメージは大きい。
あと二時間の勤務時間も、今日は乗り切れるような気がしなかった。
「麻宮さん、具合でも悪いんですかぁ?」
野沢くんが立ち上がって私に近づく。
顔を覗き込んで、「うわっ、ずいぶんと顔色が悪いですね」と表情を強張らせた。
「大丈夫か?」
聞いてきた課長に「はい」と答える。
「送って行くか?」
「いえ、ひとりで大丈夫です」
デスクをサッと片づけ、「申し訳ありませんが、お先に失礼します」と部屋を出た。