強引上司にさらわれました
駅までの道のりをいつもの倍以上もかけて歩く。
惰性で足を動かしているような感じだった。
どこも悪くないのに、鉛を背負ったみたいに体が重かった。
平日の昼間の電車は、大学生らしき若い人や主婦と思われる姿がチラホラ見える。
通勤時とは違った穏やかな空間だった。
だからこそ余計に、私ひとりが浮いているように思えた。
電車に揺られて駅に到着する。
なんとなく歩いていた私の目にリカーショップが留まった。
美味しいお酒でも買って帰ろう。
今夜はパーッと飲もう。
自動ドアから中へ入り、ワインコーナーへ。
ズラリと並んだラベルを見て、適当に手を取る。
せっかくだから、今日は奮発してしまえ。
一旦手に取ったお手頃のワインを棚に戻し、私でも手に届く範囲の高級白ワインを買うことにした。
おつまみも必要だからとスーパーへ寄っていろいろ買い込み、マンションへと帰り着いた。
課長が帰るまでにはまだ時間もあるし、チーズやサラミだけじゃなく、なにか作ろう。
エプロンを着け、キッチンへ立つ。
冷蔵庫に残っていた材料を全て使い切る勢いで、次から次へと調理していく。
そうして出来上がったのは、タコのカルパッチョ、豚しゃぶの梅チーズ海苔、生ハムとクリームチーズのバケットだった。
それをソファテーブルのほうへ運び、買ってきたチーズやサラミも器に盛る。