強引上司にさらわれました
片方の肘をベッドに突いた状態で私にまたがり、もう片方の手が私の髪をそっと撫でる。
「泉……」
気が遠くなってしまいそうになるほど、艶めいた声だった。
「課長」
「名前で呼べ」
「……え?」
「俺の名前だ」
課長の名前……“涼成”(りょうせい)って?
「急にそんなの無理です」
首を横に振る。
「上司命令だ」
「……これも仕事なんですか?」
私の質問に、課長はフッと笑った。
あまりにも哀れだから、上司として部下の傷を癒そうとしているだけ?
……それでもいい。
課長が同情で私を抱いてくれようとしているなら、それでも。
「……涼成」
恥ずかしさから小さく名前を呼ぶと、課長は目を細めて口元に笑みを浮かべた。
……やだな。
名前を呼んだだけなのに、急に親密度がアップしたみたいだ。
頬は熱を帯びるし、体も上気する。
課長に抱きしめてもらいたくて首に両腕を回すと、課長は優しいキスを落としてくれた。