強引上司にさらわれました
課長の挨拶から始まった午前の講義は、予定したとおりに滞りなく進み、学生からの質問もふんだんに挙がった。
研修ということを案内していただけに、出席した学生の意気込みも例年以上だ。
午前十一時に講義が終了すると、早速午後の竹とんぼ作り演習に向けて、班分けを行なった。
五人で一チーム。
全部で五十四チームという大所帯が出来上がる。
チームの構成人員があまり多いと、参加しない学生が出てくるし、少なすぎてもチームワークが取りづらい。
五人という人数は、チームとしてそこそこうまく機能するだろうという課長の判断だった。
チーム編成が決まると、材料の確認に入る。
竹材、竹軸、小刀、キリ、軍手、鉛筆、定規、瞬間接着剤、紙やすり。
それらが今日使う材料だ。
コストが書かれたリストと作成手順があり、それを元に、いかに安く性能の良いものを作れるかがポイントになる。
もちろん、作成手順通りに作らなくてもいいのだ。
独創性や発想力を活かして良いものを作ること。
それを体感してもらえれば。
ひと通りの説明を終え、一旦お昼となった。
仕出しで頼んだ弁当を全員に配り、私たちも同じものを隅っこで食べ始めた。
「課長、なにかいいことでもありましたか?」
唐突に野沢くんが尋ねる。