強引上司にさらわれました
「いいこととは?」
課長が逆に聞き返す。
「さぁ?」
聞いておきながら、野沢くんは首を捻る。
大きな口を開けて、白身魚のフライを頬張った。
「なんか最近、機嫌がいいみたいだから」
上司を相手に、しかも朝倉課長に、よくぞそんなことを聞けたものだと感心してしまう。
裏を返せば、普段は機嫌が悪いと言っているようなものだ。
「言われてみれば、そうですよね」
村瀬さんまで野沢くんに乗っかる。
一瞬だけ課長と目が合って、訳もなく私は逸らした。
「別に今までとなんら変わりはない」
課長がきっぱりと答える。
「そうですかぁ? 彼女ができたとか。ほら、課長ってモテるじゃないですかぁ。選び放題で羨ましいなっていつも思ってるんですけどね」
「そんな自覚はない」