強引上司にさらわれました

「うわーっ! 色男の余裕ってやつですね。麻宮さんはどう思います?」


突然話を振られて、ご飯が喉の変なところに入り込んだ。
胸をトントン叩いてやり過ごす。


「大丈夫ですか?」

「……うん」


涙目で答えると、課長はペットボトルのお茶の蓋を開けて手渡してくれた。


「ありがとうございます」

「それか。そういう気遣いができるから、余計にモテるんだぁ」


野沢くんは手帳になにやら書き留めると、再び箸を進めた。
モテる男の極意でも書いているのか。

私からしてみれば、野沢くんだって充分モテると思うのだけど。
確か、バレンタインデーだって、他部署のお姉さま方から紙袋にいっぱいになるほどもらっていたはず。
女の子に困らないのは、野沢くんのほうだ。


「余計な無駄口を叩いてないで、さっさと食べて午後の準備を始めるぞ。学生たちだけじゃなくて、俺たちも竹とんぼを作るんだからな」

「え!?」


それには私たち三人が一斉に目を見開いた。

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