強引上司にさらわれました
「そこが野沢の弱いところだな」
課長にニヤリと笑って言われ、野沢くんは「な、なんですか、それ!」と息を巻く。
「学生たちにだって、前もって竹とんぼ作りをやることを案内してるんだぞ。やる気のある者なら、前もって調べてくるだろ」
野沢くんはグッと言葉を詰まらせ、それは例外でなく村瀬さんも私も同じだった。
そうか。
案内を出したときには、もう始まっていたのだ。
潜在能力の高い学生を集めるための会社説明会は。
学生たちのほうを見てみれば、グループ内で話し合う姿や早速竹を切る姿が見受けられた。
「ほら、野沢、この竹を十五センチに切れ。いいか、材料コストを抑えるためには、十五センチピッタリだぞ。一ミリも狂わせるな」
「――は、はい!」
課長は村瀬さんや私にも指示を飛ばし、工程をどんどん進めていく。
切り分けた竹にキリで穴を開け、やすりで丁寧に削る。
徐々に出来上がってきた羽は、私が見たことのある竹とんぼとは少し違っていた。
真ん中をよじったような形。
これがブーメランの役割を果たすのだろう。
「村瀬、表面をもっと滑らかに。よし、あとは俺が」
落ち着き払っている普段の仕事ぶりとは違って、課長はワイシャツの袖をまくりあげ、目をキラキラさせていた。
私は気づけば、そんな顔に釘づけになっていた。