強引上司にさらわれました

◇◇◇

それから二週間がまたたく間に過ぎていった。

一昨日の土曜日には第一回目の入社試験で筆記テストと適正検査が行なわれ、私は外注に出す答案用紙の発送手続きをしていた。
会社説明会に参加した、およそ四分の三の学生がその試験に臨んだ。

自分の気持ちを思い知らされてからというもの、急に意識してしまって、私の生活スタイルは課長を避けるように変化している。
朝は一緒にならないように早出をしたり、帰りは定時きっかりで退勤。
ご飯は作るものの、課長のタイムスケジュールとは違う時間にひとりで食事をし、マンションでもなるべく顔を合わせないようにしていた。

百八十人分もの用紙となると、小さな段ボールひと箱分でも結構な重さになる。
『よいしょ』と心の中で掛け声をかけ、宅配業者が集荷に訪れる受付へ行こうとエレベーターを待っていた。

手が痺れるから早くきてくれないかと待ち焦がれていると、不意に横から現れた手が私から段ボールを奪い取った。
急に重しを取られて、思わずバランスを崩す。


「――課長」


それが朝倉課長だったものだから驚いてしまった。
私が人事部の部屋を出てくるときには、気難しい顔をしてパソコンに向かい合っていたようだったから。

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