強引上司にさらわれました

◇◇◇

課長が言っていたように私のスマホに連絡が入ったのは、退勤時間まで一時間を切った頃だった。
それは、『午後六時、駅前の喫茶店【ニーチェ】』という素っ気ないLINEのメッセージだった。

いったいなにがあるんだろう。

私の視線を知ってか知らずか、課長のことをチラッと見てみても、パソコンから視線を動かす気配はない。
どことなく落ち着かない気持ちのまま残りの一時間を過ごし、指示通りに喫茶店に私は着いた。

店内に入ってすぐ目に入った人物に心臓が止まりかける。
相手も私を見て驚いていた。
ガタンと椅子を鳴らして、その人物が立ち上がる。


「麻宮さん? どうしたんですかぁ?」


野沢くんだったのだ。
課長と待ち合わせしていたなんて野沢くんが知ったら、また勘繰られてしまう。
間違えた振りをして店を出るために方向転換をしようとしたときだった。


「もしかして、麻宮さんも課長に呼ばれました?」


麻宮さん“も”?
ということは、野沢くんも課長からここへ来るように言われて……?

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