強引上司にさらわれました
「……野沢くんも、なの?」
確かめるようにゆっくり尋ねる私に、彼は「はい」と言った。
ますますわからない。
課長はいったいなにをするつもりなんだろう。
野沢くんとふたり、首を傾げながら四人掛けテーブルに隣り合って座った。
それから五分と経たないうちにお店のドアが開けられ、課長が現れた。
ところが、そのうしろから着いて来た人物を見て息が止まりそうになる。
どうして三田村さんが……?
課長が伴なって入ってきたのは、社員食堂で親密そうに見えた三田村翔子さんだったのだ。
まさか、部下に交際宣言でもするつもりなのか。
それとも、それをすっ飛ばして結婚報告だとか。
いっぺんにいろんなことが頭を過る。
嫌な予測しか立てられない。
息苦しさに胸が詰まった。
三田村さんは課長のうしろで恥ずかしそうに顔を俯ける。
自分のことで精一杯だったけれど、思い出したように見てみれば、野沢くんも私の隣で唖然としていた。
課長に椅子を引かれて三田村さんが座ったのは、野沢くんの前だった。
依然として目線は下だ。
座るなり課長が「コーヒー四つ」と店員に注文する。