強引上司にさらわれました

野沢くんが七歳年下ということが、なかなか言い出せなかった理由だろう。
まだ二十五歳の彼には、結婚も妊娠も重いだろうという愛情ゆえに。
そして、ふたりを見た野沢くんは、私以上に嫉妬に苦しんでいたのかもしれない。


「野沢、彼女と結婚したいという気持ちは今も変わらないか?」

「そんなこと、課長に聞かれるまでもないですけど」


三田村さんの妊娠を先に課長が知っていたことをまだ根に持っているようだ。
野沢くんはつっけんどんに言い返した。

課長はそんな野沢くんを見て、「ほら、出して」と三田村さんになにかを促す。
すると彼女は、バッグの中から折りたたまれた用紙を取り出した。


「これ、前にサインしてくれたやつなんだけど……」


三田村さんはそれを広げて、野沢くんに向けてテーブルの上を躊躇いがちに滑らせた。

――婚姻届だ。
そこにはすでにふたりの名前が記載されて、判も押されていた。


「これ、どうしよう」

「どうしようって、出すに決まってんじゃん」


野沢くんが即答する。

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