強引上司にさらわれました

バッグを投げ出し、キングサイズのベッドに背中からダイブする。

ここに、達也とふたりで泊まるはずだった。
これから始まるふたりの生活に胸を躍らせて、明日は新婚旅行へ旅立つはずだった。

なにがどうなって、私はここにひとりでいるんだろう。

教会に現れた舞香ちゃんに連れ去られる達也。
そのシーンが何度も頭の中に再生される。

達也は、舞香ちゃんとも付き合っていたの?
私は、二股されていたの?

いくら思い返してみても、達也にほかの女の影があったように感じるときは一度もなかった。
約束をすっぽかされたことはないし、態度が素っ気なくなることも、知らない香水の匂いがすることもいっさいだ。

連絡はお互いにまめなほうではなかったけれど、不自然な挙動はなかった。
晴天の霹靂という言葉をこれほど的確に説明する状況はないんじゃないか。

でも達也は、私ではなく舞香ちゃんを選んだ。
その事実は、舞香ちゃんとも付き合っていたというなによりの証拠だった。

私は、式を挙げる当日まで、なにも気づかなかったのだ。


ひとりになってゆっくり考えているうちに、ふつふつと怒りが沸いてくる。
人生の晴れ舞台で、祝福じゃなく憐みを受けるなんて聞いたこともない。

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