強引上司にさらわれました
「ど、どうして私が!?」
「野沢を可愛がる先輩だろう?」
可愛がっているかどうかは置いておき、確かに先輩ではある。
だけど、そんな大役を担っていいものかと。
ただ、私をここへ呼んだ理由が、今やっと分かった。
「麻宮さん、お願い」
三田村さんが言えば、野沢くんまで「お願いしますよぉ」と懇願する。
そこまで言われてしまえば、嫌だと断る理由はない。
課長が出してくれた万年筆でサインをした。
もうひとりの立会人の欄には課長の名前。
主役の欄じゃないにしろ、婚姻届に課長の名前と並ぶのはちょっと恥ずかしかった。
「野沢、ここのコーヒーの支払いは頼んだぞ」
「え? 嘘。課長のおごりじゃないんですかぁ!?」
「お祝いがコーヒー代でいいなら、それでもいいけどな」
「じゃ、結構です!」
お祝いはしっかりもらいたいらしい。
野沢くんは伝票を無造作に掴んで自分のほうへ引き寄せた。