強引上司にさらわれました
課長の言葉の意味を咄嗟に考える。
“そういう理由”……?
――もしかして!?
軽率なことを言ってしまったと気づいたのは、その数秒後だった。
「ち、違います。違うんです。それはですね、そういうわけじゃないんです。ヤキモチとかじゃ決して」
否定することに必死になる。
自分でも驚くほど早口だった。
「……ヤキモチか」
課長はニヤリという風に片方の口角を上げると、前を向いて再び歩き出した。
「だから、違うんですってば」
もう、やだ。
本当は妬いていたなんてこと、課長には絶対にばれたくない。
私が課長を好きだということも。
振られて一ヶ月で別の男の人を好きになるような軽い女は、きっぱりご免だと思われるだろうから。
かといって、はっきり失恋する勇気はない。
課長の背中を追うように足を速める。
「おや、ふたり一緒は久しぶりじゃないかい? ケンカでもしたのかと心配していたんだよ」