強引上司にさらわれました
心臓が止まるかと思った。
見間違えかとも思った。
恨みはないはずだけど、もしかしたら私の心の奥底に憎悪が眠っていて、それが見せる幻影かとも思った。
でも違う。
舞香ちゃんが、私の目の前に立っていたのだ。
「……あの、どうして舞香ちゃんが……?」
やっとの思いで口を開くと、ハッと我に返ったように舞香ちゃんは踵を返した。
「ちょっと待って!」
慌てて彼女を追いかける。
その腕を掴んで、なんとか引き留めた。
「……麻宮さん、ごめんなさい」
私のほうも見ずに頭を上げる。
目も合わせられなくて当然だ。
私と達也の気持ちは別にして、結婚式で新郎を奪った事実は誉められたことじゃない。
でも今はそのことよりも、舞香ちゃんがどうしてここにいるのかということだ。
「ちょっと聞きたいことがあるの」
怯える舞香ちゃんを部屋に招き入れた。