強引上司にさらわれました
◇◇◇
どこか遠くのほうで何かが鳴っている。
あれは……何の音だろう。
その判別がつかないでいると、ふと水面を漂っているような感覚を覚えた。
いや、単に漂っているだけではない。
荒れ狂う波間を彷徨う小舟に乗っているようだった。
悪酔いしそう。
そこで不意に目を開ける。
すると目の前には見慣れない光景が広がっていた。
高い天井、モダンな西洋風インテリア。
ここ、どこだっけ……?
ガバッと起き上がったところで、激しい眩暈と頭痛に襲われた。
……イタタタタ。
こめかみを押えて目を開ける。
私は、大きなベッドに仰向けに寝ていたようだった。
そうだ。思い出した。
……忌々しい記憶を。
もつれる足をなんとか動かしリビングへ行くと、テーブルの上には私が食べ散らかした料理があった。
転がるロゼの空瓶が二本。
あれをひとりで飲んだらしい。
途中からほとんど記憶がない。
そしてそこで、部屋のチャイムが鳴らされた。