強引上司にさらわれました
これだ。さっき意識の狭間で聞こえたのは、この音だ。
ルームサービスの片付けでも来たんだろうか。
だとしたら、酩酊した私とテーブルの惨状を見て、また憐れな女だと思われること請け合いだ。
大きくため息を吐いて、ドアを開けた。
「なんだ、いるんじゃんか。それなら早く開けてくれればいいのに。って、うわっ、酒くせえ」
そこに立っていたのは、弟の聡だった。
鼻を摘まんで顔をしかめた。
「父さんと母さんから様子を見てこいって」
私の後から入ってくると、リビングの見るに耐えない様子に唖然とする。
「私なら大丈夫」
「これが大丈夫っていうさまかよ」
まぁ確かに、どうしたってそうとは思えないだろう。
「お父さんは?」
「父さんなら平気。ではないか。相当ショックを受けてる。達也さんのこと気に入ってたし」
「だよね……」