強引上司にさらわれました
もうひとり息子が増えたと喜んでいたのは、ついこの間のことだ。
聡と達也のふたりに囲まれて、嬉しそうに晩酌した夜のことを思い出す。
「ほかの親族は?」
山梨からバスで駆けつけてくれた、麻宮家御一行様。
おじさんもおばさんも、式の直前には控室に来て「おめでとう」と言ってくれたっけ。
「みんな訳がわからないって感じだったよ。俺もわからないけど」
「……ごめん」
「いや、俺に謝られてもさ。一番つらいのはねーちゃんだろうし」
なんて心優しい弟だ。
聡は、思わず抱きつきそうになった私を両手で「くせーよ」と阻止した。
何気にちょっと傷つく。
「とりあえず、みんなのことはバスに乗せたよ」
「ありがと……」
「あとで招待客への謝罪とか大変そうだな」
そうだ。
そんなこともあったんだ。
明日からの住むところの心配以前の大問題だ。
いっそのこと、このまま消えてしまいたい。
その場にうずくまって頭を抱える。