強引上司にさらわれました

「おい、ねーちゃん、大丈夫か?」


聡が私の背中をさすってくれた。
すると、それが災いしたのか、私は急に吐き気をもよおしてしまった。


「……うっ、気持ち悪い」


口元を手で覆い、千鳥足でトイレへと駆け込む。
ふたを開け、ひと思いに吐き出した。
ついさっき、暴飲暴食したものを全部。

そのおかげか、少しすっきりした気がする。
歯磨きをしてバスルームから出ると、聡は何やら眉間に皺を寄せて腕組みしていた。


「ねーちゃん、もしかして……」

「……なに?」


妙に神妙な顔つきだ。
聡の目線が下へとゆっくり動いていく。


「達也さんとの子供……」

「――ま、まさか! 違うってば! 今の吐き気は、あれでしょ、あれ!」


テーブルを勢いよく指差す。

勘違い甚だしい。
……いや、結婚するはずだったのだから、妊娠しても不思議はない。
今どき、婚前交渉をとやかく言うなんてないだろうから。
ただ、生理は順調だ。

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