強引上司にさらわれました
野沢くんに念を押すと、彼は「麻宮さん、なんか張り切ってません?」と眉根を寄せて目を細めた。
探るように私を見つめる。
「別に張り切ってなんかいません。いつもと一緒」
軽く一蹴すると、野沢くんは「あ、分かった!」と指をパチンと鳴らした。
なにを言われるのかと、思わず身構える。
まさかとは思うけど、課長とのことをなにかつかんでいるわけではないよね……?
彼には一度、課長との仲を疑られた経緯があるから、ギクリとせずにはいられない。
私たちは妙な緊張感に包まれた。
野沢くんの顔がどんどん私に近づいてくる。
私は金縛りにでもかかってしまったかのように、身じろぎひとつできずにいた。
ゴクリと生唾を飲み込む。
目を見開いて野沢くんを見た。
「課長の座を狙ってますね?」
「……へ?」
間抜けにも、口をポカンと開けてしまった。
片眉を器用に吊り上げ、野沢くんが腕組みでそんな私を見据える。
「だーかーら、課長の座を狙ってるんですよね?」
野沢くんが声のトーンをひと際上げたものだから、村瀬さんがパッと顔を上げてこちらを見る気配がした。