強引上司にさらわれました
な、なーんだ。
そっちの話か。
緊張の糸がふにゃふにゃと緩んだ。
「やっぱりそうなんですね?」
なにも答えない私に、野沢くんはさらにたたみ掛ける。
「違うってば。どうして私が課長の座なんて」
ホッとしたのをひた隠し、野沢くんの肩をツンと弾いた。
「だって、やけに張り切ってるから。これは絶対そうだと思うじゃないですかぁ」
野沢くんは、本気で課長の座を狙っているのか。
志が高いのは良いことだけど、入社三年で課長とはずいぶんと無謀だ。
視界に入った村瀬さんもクスッと笑いこぼれていた。
「違うから安心して」
「そっかぁ。よかったよかった」
大きく伸びをしながら自分の席へと戻る。
「役員への案内、忘れないでね」