強引上司にさらわれました
村瀬さん以下私たち三人は、揃ってポカンとした。
「で、ですけど、そんな公示はされてませんよね?」
課長の椅子を狙っていた野沢くんが、信じたくないといった様子で部長に半ば食って掛かる。
でも、野沢くんの言うとおりだ。
そんな人事異動は公にされていない。
「まだ内示の段階だがね。みんなには先に公表しておこうと思ったんだ」
部長は野沢くんに構うことなくニコニコと続けた。
「水森です。正式には来週からになりますが、どうぞよろしくお願いします」
水森さんが頭を下げる。
私の隣で「マジかよ……」なんて野沢くんが茫然とするものだから、村瀬さんと私は思わず顔を見合わせ笑い合った。
これは、朝倉課長以上に厳しい部署になるかもしれない。
次期課長の座を逃した野沢くんは、打ちひしがれたような顔をして椅子に体を預けた。