強引上司にさらわれました

◇◇◇

スーパーで買い込んだ食材を両手いっぱいに持ち、課長のマンションへとたどり着いた。

空港で課長を見送り、美優の部屋を出たあと、私はすぐにホテルをチェックアウトしてここに戻ってきていた。
私が使わせてもらっていた部屋は、出て行ったときのまま。
段ボールに入った荷物もそのままになっていた。

その夜、鉢合わせした管理人さんは、私がなんの躊躇いもなくオートロックを抜けて行こうとするものだから、「おや、仲直りは済んだのかい?」なんてからかった。


スーパーの袋から食材をすべて出し、キッチンカウンターへ並べる。
今日は、鮮魚コーナーから魚の切り身をたくさん買い込んできた。

これをスライスして、厚焼き玉子を焼かなくては。
それから酢飯もだ。
きっと日本食が恋しくなっているに違いない。
今夜は手巻き寿司パーティーをすることに決めたのだ。

キッチンにある置き時計を見てみれば、時刻は既に午後五時を回っていた。
空港でスムーズに手続きが済めば、あと一時間くらいで帰って来る。
急いで取り掛かろう。
エプロンを着用して手を洗った。

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