強引上司にさらわれました
◇◇◇
待ちに待ったインターフォンが鳴らされたのは、ちょうどお吸い物が完成したときのことだった。
急いで玄関へと急ぎ、ドアを開ける。
「ただいま」
課長はキャリーバッグを従えて、口元に微かに笑みを浮かべていた。
「……おかえりなさい」
なんだか気恥ずかしくて思わずうつむく。
まるで新婚家庭みたいだと勝手に想像して、頬が熱くなった。
そういえば、こんなパターンは初めてかもしれない。
私が先に帰っていたとしても、課長は自分でカギを開けて入っていたから。
課長が靴を脱ぐのを見届け、彼のスリッパ音を背中に聞きながら、先にリビングへと向かう。
「あのですね、ご飯を作ってみたんです。お腹空いていませんか? 機内食はどうでしたか? 時差ボケは大丈夫ですか? 明日から出社なんてつ――」
「そんなに一気に聞かれても困る」
突然、課長にうしろから抱きすくめられた。
照れ臭さを隠すためにあれこれまくしたてた私の口は、当然のことながら封じ込められる。