強引上司にさらわれました
「おい、ねーちゃん?」
「なに」
眉間にざっくりと深い皺を刻んだ顔で聡を睨む。
「こえーよ」
「……あ、ごめん」
慌てて眉間を指先で伸ばすものの、どっぷりと闇に覆われた心は隠し切れない。
「母さんたちが、一緒にメシでもどうかって」
「食べられるわけないでしょ!」
つい突き放して言ってしまった。
聡が面食らったようにしているから、「あ、違うの」と否定する。
「あれだけ食べたから、もう無理って意味」
柔らかい笑顔を浮かべてみたけれど、自分でもわかるくらいに引きつっている。
「ほんとごめん。だから三人で行ってきて。達也に請求するから、じゃんじゃん美味しいもの食べちゃっていいよ」
そう言葉をかけて聡を見送ると、再び部屋は私ひとりだけになった。